PEEKとは ― 高機能樹脂の代表格、その特性と用途
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも特に高性能な樹脂であり、機械的強度・耐熱性・耐薬品性・寸法安定性に優れています。
連続使用温度は約260℃に達し、燃焼しても有毒ガスをほとんど発生させないことから、航空宇宙、半導体、医療、エネルギー関連など、高信頼性を求められる分野で広く採用されています。
代表的な用途には以下のようなものがあります。
• 半導体製造装置の部品、絶縁治具
• 医療機器の構成部品(滅菌対応が可能)
• 航空機エンジン周辺部材、ギヤ、ベアリングシート
• 自動車の軽量化部品
このようにPEEKは、金属の代替としての性能を持ちながら、樹脂としては群を抜いた強度・耐熱特性を備えています。
しかし、その特性ゆえに、PEEK切削加工には高度な技術と設備が必要です。

なぜPEEK切削は難しいのか ― 材料特性と加工課題
PEEKは一見、樹脂の中でも硬く加工しやすい印象を受けますが、実際には非常に繊細な特性を持ち、以下のような理由から切削が難しいとされています。
① 高硬度・高粘性による切削抵抗の大きさ
PEEKは結晶性樹脂であり、分子構造が密で硬度が高く、切削抵抗が大きいのが特徴です。
工具への負担が大きく、摩耗が早いため、切削面にバリや白化(表面の曇り)が生じやすくなります。特に精密加工では、刃先の摩耗による寸法ずれが問題になります。
② 熱変形と再結晶化
PEEKは耐熱性に優れる一方で、加工時の局所的な発熱で結晶構造が変化(再結晶化)し、内部応力が残ることがあります。これにより、加工後に反りや歪みが発生するケースがあります。
温度管理と切削条件の最適化が極めて重要です。
③ 吸湿・乾燥状態の影響
PEEKは吸湿性が低い樹脂ですが、乾燥状態によって切削性や寸法安定性が変化します。吸湿状態のまま加工すると仕上げ面が荒れたり、寸法誤差が生じるため、事前の乾燥処理(150℃×3〜4時間)が推奨されます。

PEEK切削で品質を左右する3つの技術要素
PEEKの切削加工を成功させるには、以下の3つの技術要素を正確に制御する必要があります。
■ 工具選定と刃先管理
高硬度樹脂のPEEKには、超硬工具やPCD(多結晶ダイヤモンド)工具が有効です。
切れ味の鈍い工具では発熱・毛羽立ち・バリが増え、表面品質が低下します。刃先の鏡面仕上げやコーティング(TiAlNなど)によって寿命を延ばしつつ、工具摩耗を常時モニタリングすることが理想です。
■ 切削条件と温度管理
PEEKの最適な切削速度はおおむね100〜400m/min程度。
ただし、加工機の剛性や形状によって適正値は変化します。送り速度が高すぎると表面が粗れ、低すぎると発熱が集中するため、熱拡散を考慮した中速域での加工が推奨されます。
また、クーラントやエアブローによる冷却制御が、変形抑制に大きく寄与します。
■ チャッキングと変形対策
PEEKは高剛性ながらも熱膨張係数が金属より大きいため、治具設計と固定方法が品質を左右します。
加工後の反りを防ぐため、温度が安定した加工室・精密チャック・真空治具の使用が望まれます。
また、複雑形状部品では複数工程での分割加工・中間応力除去焼鈍(アニール処理)を行うこともあります。
発注前に知っておきたい ― PEEK加工を成功させるためのポイント
PEEK切削は、樹脂切削の中でも最も高い技術レベルが要求される分野です。
発注前に以下の点を確認することで、品質トラブルを防ぐことができます。
- PEEK加工実績の有無
経験の浅い業者では反りや寸法不良が生じやすく、再加工コストが増大します。 - 温度・湿度管理された加工環境か
PEEKは微小な温度変化でも寸法が変化します。恒温環境での加工が理想です。 - 検査・アニール(熱処理)体制の有無
応力除去焼鈍や非接触測定機器を備えた体制なら、精密品でも安定品質を実現できます。
ミワレイズでは、樹脂切削専門の技術者によるPEEK加工を得意とし、高精度な加工設備・恒温設備・仕上げ技術を活かして、寸法精度±0.01mmクラスのPEEK部品を多数製作しています。試作から量産まで一貫対応し、高機能樹脂加工のパートナーとしてお客様の信頼に応えています。

まとめ
PEEK切削は、耐熱性・結晶性・硬度などが複雑に絡み合う「樹脂切削の中でも特に難易度の高い加工」です。
高精度な仕上げを得るためには、工具・条件・温度・保持方法すべてを最適化しなければなりません。
樹脂切削の専門メーカーであるミワレイズは、長年のノウハウと設備をもとに、PEEKをはじめとする高機能樹脂の精密加工に対応。
品質と信頼性を重視するお客様に、最適なPEEK材の切削加工サービスを提供いたします。



