ジュラコン(POM)の切削ってなぜ難しい? 発注前に知っておきたい基礎知識

ジュラコン(POM)とは ― 高強度エンジニアリングプラスチックの代表

ジュラコン(POM・ポリアセタール)は、エンジニアリングプラスチックの中でも金属代替を目的として開発された高機能樹脂です。特に射出成形で多用されますが、切削加工においても優れた特性を発揮します。

ジュラコン(POM)の代表的な特性
〇高剛性・高強度
〇優れた耐摩耗性
〇寸法安定性が高い
〇低摩擦で摺動性が良い
〇耐薬品性が高く、吸水率も低い

これらの性質により、ジュラコン切削は以下のような幅広い用途で利用されています。
〇食品・飲料製造装置の部品
〇ポンプのインペラ、ギア、スプロケット
〇医療機器・分析装置部品
〇半導体装置の搬送部材
〇OA機器の摺動部品

しかし、樹脂としては寸法安定性が高い一方で、切削時には独自の癖があり、ジュラコン(POM)切削には経験値が必須です。

なぜジュラコン(POM)切削は難しいのか ― POM特有の加工課題とは?

ジュラコン(POM)は切削性が良いと言われますが、「扱いやすい=誰でも精度を出せる」わけではありません。
実際には、以下のような独自の難しさを持っています。

① 熱による変形と反り
ジュラコン(POM)は熱伝導率が低く、切削時の局所的な発熱によって
・微小な反り
・加工後の寸法変動
・面精度の低下
が発生することがあります。

特に薄肉形状や長尺物では、発熱により加工精度が安定しづらく、温度管理と切削条件の最適化が必要です。

② 切りくずの巻き付きとバリ
ジュラコン(POM)は粘りがあるため、切りくずが「糸状」になりやすく、工具やワークに巻き付くことがあります。これにより、
・バリの増加
・仕上げ面の曇り
・工具摩耗の促進
が発生します。
特に細穴加工では、切りくずの排出が不十分だと加工不良の原因になります。

③ 内部応力による寸法変化
ジュラコン(POM)は、素材の成形過程で内部応力が残留していることがあり、切削除去によって応力が解放されると、加工後に寸法が変わる現象が起こります。
精密加工では、内部応力の影響を理解した加工工程設計が必須です。

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ジュラコン(POM)切削で品質を左右する重要ポイント

ジュラコン(POM)切削で良好な品質を得るには、工具・条件・治具設計のすべてを最適化する必要があります。

〇工具の選定と刃先管理
ジュラコン(POM)切削では、
・超硬工具
・鏡面仕上げの切れ味が良い刃先
・大きめのすくい角
が効果的です。
刃先が鈍ると摩擦熱が増え、白化やバリの発生につながるため、工具の摩耗管理が重要です。

〇 切削条件 ― 熱を溜めない加工
ジュラコン(POM)の加工では、以下の条件がポイントです。
・中高速の切削速度(発熱を分散)
・高めの送り速度(切りくずの排出性向上)
・薄削りでの多工程加工(熱変形を抑制)
ジュラコン(POM)は熱で寸法が動きやすいため、温度をコントロールしながら加工する必要があります。

〇 冷却と切りくず処理
エアブローやミストの併用により発熱を抑え、切りくずを排出しやすくします。
糸状の切りくずは、工具への巻き付きリスクが高いため、条件調整と排屑設計が重要です。

〇 チャッキングと固定
ジュラコン(POM)は弾性があり、強すぎるクランプ力で
・変形
・爪跡
・加工後の寸法変化
が起きることがあります。

専用治具や広面固定を使い、変形を最小限に抑える保持方法が必要です。

発注前に知っておきたい ― ジュラコン(POM)切削を成功させるポイント

ジュラコン(POM)の精密加工で失敗しないために、発注前には以下を確認することをおすすめします。

①ジュラコン(POM)切削の実績
ジュラコン(POM)は扱いやすいと言われますが、高精度加工には経験値・切削データ・治具設計力が不可欠です。

② 温度管理と加工環境
熱変形を抑えるため、恒温環境での加工や、温度を考慮した工程設計が行われているか確認しましょう。

③ 切りくず処理・バリ取り技術
糸状切りくずの処理や、微細バリ除去に対応できるかが、最終品質に大きく影響します。

④ 検査体制
・面粗さ測定
・三次元測定
・画像寸法測定
などの高精度な測定が可能な検査設備が重要です。


ミワレイズでは、樹脂切削専門の加工技術・工具選定ノウハウ・温度管理された加工環境を活かし、ジュラコン(POM)の精密切削に対応しています。
難しい薄肉加工や、品質保証が必要な量産部品の加工まで多数の実績があります。

POM(ジュラコン)加工事例:ネジストッパー

まとめ

ジュラコン(POM)は優れた機械特性を持った樹脂ですが、切削時には熱変形・内部応力・切りくず処理など、独自の難しさが存在します。高精度なジュラコン(POM)切削には、豊富な経験と最適化された加工条件が不可欠です。

ミワレイズは、ジュラコン(POM)切削を含む樹脂加工に長年特化し、高精度・高品質な部品製作を一貫体制でサポートします。

ジュラコン(POM)切削加工でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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