テフロン(PTFE)の特性と用途 ― 優れた機能と加工の難しさ
テフロン(PTFE)は、融点は約327℃と高く、-200℃〜260℃の広い温度域で安定した性能を維持します。また、摩擦係数が極めて低いため、摺動部品にも多く用いられます。その反面、機械的強度が低く、寸法安定性に欠けるという弱点があります。これが切削加工時に「変形しやすく寸法が出にくい」最大の原因です。
主な用途は以下の通りです。
- 化学プラント用シール材・ガスケット
- 医療用チューブ・絶縁部品
- 半導体製造装置の治具類
- 摺動リング、スライドプレート
つまりテフロン(PTFE)は、高機能であるほど加工が繊細になる材料なのです。

なぜテフロン(PTFE)切削が難しいのか ― 材質物性の観点から
テフロン(PTFE)切削が難しい理由を、物理特性の観点から整理すると次の3点に集約されます。
① 極端な低弾性率とクリープ性
テフロン(PTFE)は弾性率が非常に低く、外力によって容易に変形します。加工中のクランプ力や切削抵抗によって、一時的に形が変わり、加工後に戻る(クリープ変形)ため、寸法誤差が発生します。高精度を要求する製品では、加工後の寸法安定時間を確保することが重要です。
② 熱伝導率の低さと熱変形
テフロン(PTFE)は熱伝導率が低く、切削熱が局所に集中します。これにより、表面が溶融気味になったり、軟化して工具が食い込む現象が起きます。切削条件を適正化し、低発熱・低圧力の加工を行うことが必須です。
③ 切りくず巻き付きと静電気の影響
PTFEはテフロン(PTFE)帯電しやすく、切りくずが工具やワークに付着しやすい特性があります。これにより仕上げ面の荒れ・寸法不良を引き起こすことがあります。静電気対策や切りくず除去機構の工夫が求められます。
テフロン(PTFE)切削の成功ポイント ― 工具・条件・治具設計の最適化
テフロン(PTFE)切削の品質を安定させるには、以下のような専門的ノウハウの積み重ねが必要です。
〇工具選定と刃先設計
テフロン(PTFE)は引きちぎれやすいため、超鋭利な刃先(ダイヤモンド工具、超硬鏡面仕上げ)が効果的です。
工具のすくい角は大きめ(+10°以上)、逃げ角も広く設定することで切削抵抗を軽減します。摩耗した工具では「毛羽立ち」や「曇った面」が発生するため、工具交換のタイミング管理が重要です。
〇 切削条件と送り速度
加工条件は「低圧・中速・中送り」が基本です。過剰な切込みは反りを誘発し、逆に低速すぎると切りくずが絡みます。当社では実験的に最適化した条件を用い、高精度加工を実現しています。
〇チャッキングと治具
柔らかいテフロン(PTFE)を確実に保持するために、真空チャックや専用樹脂治具を使用します。金属爪では滑ってしまうため、材料変形を抑制する設計が求められます。治具の接触面を広く設けることもポイントです。
〇熱・静電気対策
冷却にはミストやエアブローを併用し、加工温度を一定に保ちます。さらに、静電気除去装置(イオナイザー)を設置することで、切りくず付着や寸法ドリフトを防止します。

高品質なテフロン(PTFE)加工を実現するために ― 発注前のチェックリスト
テフロン(PTFE)の樹脂切削では、素材の特性と加工現象を熟知した業者に依頼することが品質確保の鍵です。発注前に以下の点を確認しましょう。
- テフロン(PTFE)切削の実績と加工環境
 温度・湿度管理された専用ルームでの加工実績があるか。
- 専用治具と精密測定機器
 変形を抑える保持具や、樹脂対応の非接触測定装置を保有しているか。
- 検査・アニール(熱処理)体制の有無
 応力除去焼鈍や非接触測定機器を備えた体制なら、精密品でも安定品質を実現できます。
 量産品として使用する場合は、しっかりとした品質保証体制があるかどうかも重要です。
ミワレイズでは、樹脂切削専門技術者によるテフロン(PTFE)切削加工体制を構築し、精密部品から大型試作まで柔軟に対応しています。
独自の加工ノウハウと温度管理下での品質管理体制により、他社では難しい高精度・高平面度のテフロン(PTFE)切削を実現しています。

まとめ
テフロン(PTFE)は優れた特性を持つ反面、加工の難易度が非常に高い特殊樹脂です。
弾性・熱特性・静電気といった要因を理解し、適切な工具・条件・保持方法を組み合わせることが品質を左右します。
ミワレイズは、長年にわたり樹脂切削に特化したノウハウで、テフロン(PTFE)のような難削材にも高精度・高品質で対応。
試作から量産まで、樹脂加工の最適パートナーとしてお客様の課題解決をサポートします。




